ナマズの幸運。

東京日記3 ナマズの幸運。

東京日記3 ナマズの幸運。

装丁:祖父江慎佐藤亜沙美(コズフィッシュ)
絵:門馬則雄
1,200円
仮フランス装 : 152ページ
カバー : レザック96オリヒメ
帯 : OKミューズコットン


カワカミさんが作家としての才能でこのような日常をおくるのか、このような日常だから作家なのか、目を皿のようにして読み進めるが判断が出来ない。出来る訳が無い。読んでると、そんな判断する前に、どっちでも良くなるのです。これは、とてつもない才能というものなのだと思います。

オリヒメの手触りをはじめ、とてもかわいい本です。本文イラストもふんだんに挿入されています。

シューマンの指

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

装丁者 : 帆足英里子
上製 320ページ
カバー : タイトル シルバー箔押し加工

作者のシューマンや音楽への愛、溢れる一冊。
溢れすぎてついていけない面も多々あるものの、本文中の叙情的な表現でライナーノーツではない事を思い出す。音楽知識が無いとついていけない部分も多く、それを急いで補うわけにもいかないのでiTunes Storeで内田光子の全曲プレビューを繰り返し聞きながら読んだ。

音楽はもうすでにある。それは人間が演奏するしないに関係なくもうここにある。

作中、確かなものはこの一文であり、あとはミステリー(トリック)とシューマン愛で占めている。好き嫌いが分かれるかもしれない。


装丁は音楽(ピアノ)ミステリであることを、はっきりと主張している。白と黒(たっぷりノリノリのリッチブラック)は書店の平台でも目立つ。そして、血痕の赤。
この本は2011年2月に買ったのだけれど、書店員さんは血痕をデザインと思わなかったようで、顔をしかめて自分の指を見ておいででした。あ、それはデザインですよ、と言いつつ、店員なのに知らないものなのだなあと感心。初版は2010年7月でずっと平台に置いてあったし、本屋大賞ノミネート中なのにねえ。

本屋大賞といえば、ノミネートになった旨を告知する金色の帯がついたが、それでは装丁で一番重要な血痕が隠れてしまう。まあ、目を惹くし、血痕が気持ち悪くて買えない人には丁度良いかもしれないけれど、デザイナーは泣くぞ。少なくとも狭量なワタシは泣く。


追記
本文の白い紙は目が疲れる。と思ったら、ミルキィイソベさんもそう書いていた(illustration誌 2011 3)
きっと表紙の白にあわせての本文の色なのだろう。

羊どろぼう。

ブックデザイン : 清水肇(プリグラフィックス)
装画 : 奈良美智
仮フランス製 312ページ
カバー : タントセレクト、タイトル 浮き出し加工
表紙 : 羊毛紙
帯紙 : タントセレクト


東北関東大震災の翌日に札幌弘栄堂書店さんにて購入。
『なんでもない日、おめでとう』は、ほぼ日手帳を含めて使われる言葉だけれど、しみじみ、ほんとうに、そう思う。

昼には昼を語るための文体があり、
夜には夜を語るための文体がある。
昼のことばで夜は描けないし、
夜のことばで昼を描きたくもないはずだ。
さて、その境界線にわたしはいる。
おやすみなさい。

地震が起きて、原子力発電所の事故が起きるさなか、いつもとかわらない日常をと誰もが言うが、自分の行動の一つ一つに境界線を感じる。なんだか動きがぎこちないような気がするのだ、まるで平均台の上を歩くように。そんな中、おろおろしながら読んでいたら、上の文章で少しばかり納得する。

感情的すぎるのはどうも疲れるからね、カッコつけ過ぎの文章くらいのほうがいいですよ。


本はページの角を丸く仕上げたり、紙の質感を味わえるつくり。
小口は茶色く染めてあり(三方茶という表現で正しいのか自信なし)両手で持ち上げ、眺めてしまいたくなる本になっている。
そして、今まさにそうしているところです。

2011年2月に読んだ本

面白く読んだ本が多かった2月。
『雪の練習生』が印象的。


mi4koの本棚
2011年02月
アイテム数:11
村上春樹 雑文集
村上 春樹
読了日:02月05日
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BRUTUS (ブルータス) 2011年 1/15号 [雑誌]
マガジンハウス
読了日:02月06日

ロールシャッハの鮫
ティーヴン・ホール
読了日:02月06日
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東京日記3 ナマズの幸運。
川上 弘美
読了日:02月06日
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四畳半王国見聞録
森見 登美彦
読了日:02月07日
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螺旋
サンティアーゴ パハーレス
読了日:02月11日
{book['rank']

身体のいいなり
内澤 旬子
読了日:02月14日
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不思議な羅針盤
梨木 香歩
読了日:02月20日
{book['rank']

雪の練習生
多和田 葉子
読了日:02月22日
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やわらかなレタス
江國 香織
読了日:02月27日
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もしもし。運命の人ですか

もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

カバーデザイン : 仲條正義
524円

妄想に遊びながら、鋭く分析し、さらにシュミレートに磨きをかける恋愛エッセイ集。モテないなんて嘘だ。げんに、大人気じゃないか。と思っていたら、こんな文書が。

結局のところ、自分は女性とのまともな関係を求めてはいないのかもしれない。そう思う。
超越的な可能性の方を、それよりも遥かに重視しているようだ。

まあ、運命の人、はそうであってほしいよね。

カバーは上製本、文庫本ともにデザイン界の重鎮ではあるが。。。すみません、良さが判りません。ちいぃとも。帯のコピーもいただけない。

雪の練習生

雪の練習生

雪の練習生

装幀 : 新潮社装幀室
上製 256ページ
カバー : マット(+マットニス たぶん)
表紙 : ファーストヴィンテージ
帯紙 : 方艶晒しクラフト? 「キャピタルラップ」か「純白ロール」か... ?


北極を知らないロシア、東ドイツ(統一前)、ドイツのホッキョクグマ三代の物語。
ホッキョクグマの視点から描かれており、彼らが感じる空気や匂いや夢をそれぞれの時代背景とともに読む事が出来るが、その中には強い皮肉が含まれている。王子さまと呼ばれて大人たちに利用されるクヌート(世界的アイドル熊の、あのこですよ)、サーカスで育ち育児放棄した母熊トスカ、会議に出ながら自伝を書き始めるトスカの母熊、三代の熊たちがいつも何かを感じ、考え、全身で宇宙に立ち向かう姿を描いた秀作。
孤独なクヌートに天使のように寄り添う『あの人』の存在が不思議と感じつつ、想像できてしまうのも、やっぱり不思議。


しっとりとしたマットな紙に、これ以上無いくらい黒い背景をしたホッキョクグマの写真を使用したカバー。白い動物なれど、つぶら黒い瞳ホモサピエンスはこの瞳にことのほか、弱い)と湿った黒い鼻を持つ彼らの物語であることを印象づける。
表紙は素朴な印象のファーストヴィンテージに、サーカスのテントのようなライトのような(呼称がわかりませんえん)クラシカルで時代を感じる模様。素敵です。

いちばんここに似合う人

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

ブックデザイン : 不明 おそらく新潮社装幀室
1,900円
仮フランス装
マットPP


強い個性や悲しみの中に、可笑しさのある短編集。奇妙? 奇妙でもいいけれど、そんなに突飛じゃない。いや、突飛だけれど、身に覚えのある感情がちらちらと見えてくる。ちらちらと、でもそれがヒリヒリしないので、つい、また読んでしまう。


新潮クレストブックスといえば、味のあるイラストや写真を使った『部屋に並べておきたくなるお洒落な装幀』でなおかつ『並べてもそれぞれが個性的なのに統一感がある』装幀でおなじみなのだか、このミランダ・ジュライは柔らかい黄色にヘルベチカで組まれたタイポのみという出で立ち。日本語タイトルはスミアミでしっとり。
何故だろう。判りません。