オラクル・ナイト

オラクル・ナイト

オラクル・ナイト

装幀
アッサンブラージュ : 勝本みつる
撮影 : 松浦文生
デザイン : 新潮社装幀室
1,800円
上製 256ページ
カバー マット
帯紙 OKミューズコットン(多分)



重病から生還した若い作家は、ブルックリンの文房具店で青いノートを見つけ、そこに物語を書き始める。粘度を伴った日常が病後特有の重たさを纏ったまま流れ出し、様々な物語が交錯していく。
そこにある混乱は病み上がりの作家だから感じるものなのか、収集のつかない方向へ広がり勝手にはらはらする。もちろん、明確な答えは用意されていない。しかし、重なったり隣りあわせたエピソードがどれも魅力的に描かれる。

そもそも日常は中途半端な出来事や、言えずにいる言葉や、読みかけの本や、今さっきまで見ていた夢とともにある。病み上がりでなくても、私たちは混乱の一歩手前に居る。それを痛感する。

カバーはアッサンブラージュ、日用品らしきものたちが集められている(Leicaの小箱が5つ見える、これは高価なレンズの箱なのかどうかは、高価なレンズに触れる機会がないので判らない)写真を青く、深くしている。小道具の一つである『ポルトガルの青いノート』をイメージしつつ、はっきりとさせない事で物語を示唆している。背表紙の英文の組みがカッコいい。表紙の背にもそのまま使われている。
デザインパターンであろう、青いノートをどどーんと持ってくるのを想像してみたら、カズオイシグロの『わたしを離さないで』を思い出した。

わたしを離さないで

わたしを離さないで

まあ、これは、これで。